ABOUT

気がつけばというよりも、
流れる時のなかを漂いながら、やみくもに手を伸ばした先にあったもの、
それが本のデザインをするということだった。

その出会いは振り返れば運命であったのかもしれないし、たんなる偶然であったようにも思える。
僕だけの感覚ではないかもしれないが、人生とはおよそそういうものかもしれない。

本は印刷所で複製される。
プリントされた紙は、糸や糊で綴じられ、製本され、そしてある一つの物体として存在する。
独立する物体となった本は、人の手から手へと己の運命を内包しながら空間を移動する。

「本に装飾をするなんて仕事は、近い将来伝統工芸になってしまうんじゃないか」
なんてうそぶいていたが、10年経ったいま、あながち間違えではなかったようにも思える。

ただ、真っさらな状態の束見本が届くと、いつもはっとさせられる。
小さな白いモノリスのようにたたずむその姿には、いつの時代でも無限の可能性があるように思えてならない。

 
 
長井究衡

長井究衡デザイン事務所/NAGAI SADAHIRA DESIGN OFFICE, Tokyo